Q: 【わかりやすく解説】中小企業も60時間超の残業代引き上げへ!

2023年4月から中小企業にも月60時間以上の残業割増賃金率が25%から50%に引き上げられることになりました。
それにともなう問題点や気をつけなくてはいけない点、さらに超過勤務時間を休暇に置き換えられる条件についても、わかりやすく解説します。
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1.13年の猶予を経て中小企業にも適応
大企業では2010年に施行された労働基準法の改正で月60時間以上の残業に50%割増賃金率の引き上げが行われていましたが、中小企業では人件費削減についての対応を迅速に行うことが困難とされ、経済的負担を考慮して猶予措置として25%に据え置かれていました。
しかし、2023年4月から13年間という時間を経て中小企業でも割増賃金が50%へと引き上げられます。
厚生労働省の資料では「労働者が健康を保持しながら、労働以外の生活のための時間を確保して働くことができるよう、 1か月に60時間を超える法定時間外労働について、法定割増賃金率を5割以上に引き上げます。」と記載されています。
やはり中小企業でも離職率の増加、人材確保の難しさなどの観点からも過剰な残業は控え適正な労働時間と、労働に見合う賃金の保証が大切となります。

2.中小企業の定義
中小企業の定義は以下の通りになります。

「資本金の額または出資の総額」と「常時使用する労働者数」のうちどちらかに当てはまれば中小企業となります。労働者数や資本金などの増加により中小企業から外れる場合もあるためしっかりと確認しましょう。
3.割増賃金の一例
ここで実際に例を挙げると
80時間の時間外労働を行なった場合、60時間までは従来通りの25%、残りの20時間に50%の割増賃金が適応されることになります。
時給を1500円とした場合
改正前は
80時間分(25%)=150,000円の残業代が発生する計算
改正後は
60時間分(25%)112,500円+20時間分(50%)45,000円=157,500円で
従来よりも7500円の割増賃金が上乗せされる計算になります。
給与計算時には60時間以内とそれ以上の残業時間に分けて計算することが大切になります。
4.深夜、休日の場合は更に計算が複雑に
休日や深夜などの労働時間帯に残業が被っている場合は別途計算しなおす必要が生じます。
22:00~5:00までの深夜帯に60時間以上の残業を行う場合は
深夜割増賃金率の25%+60時間以上の割増賃金率の50%=75%
60時間以下の場合は
深夜割増賃金率の25%+60時間以上の割増賃金率の25%=50%となります。
休日労働の場合は時間外労働とは区別されており、法定休日労働の割増賃金率「35%」となります。
平日と休日、深夜時間帯の区別と合わせて時間外労働時間が60時間以内か60時間以上かも含めて正確に計算する必要があります。
(ここでの休日とは1週間に1日、または4週間に4回の付与しなければならない。「法定休日」のことを指します。)
5.割増賃金の代わりに代替休暇を付与する方法
1か月60時間を超える法定時間外労働を行った労働者の方の健康を確保するため、引上げ分の割増賃金の代わりに有給の休暇(代替休暇)を付与することができます。

導入する為の条件として、過半数組合または過半数代表者との間で以下を取決め、労使協定を締結する必要があります。
■労使協定で定める事項
① 代替休暇の時間数の具体的な算定方法
② 代替休暇の単位
③ 代替休暇を与えることができる期間
④ 代替休暇の取得日の決定方法、割増賃金の支払日
また、労使協定を締結して代替休暇制度を導入したとしても、すべての労働者に対して自動的に代替休暇が発生するわけではなく。個々の労働者が、割増賃金の受領に代えて代替休暇を取得するか否かは、あくまで労働者の意思によって決定されるものである点に注意しましょう。
■ 代替休暇の時間数の具体的な算定方法

代替休暇の時間数は以下のようになります。
●代替休暇の時間数=(1か月の法定時間外労働時間数-60時間)×【換算率】
●【換算率】=代替休暇を「取得しなかった」場合の割増賃金率-代替休暇を「取得した」場合の割増賃金率
80時間の時間外労働を行った場合
(80時間-60時間=20時間)×(1.50-1.30=0.20)=4時間となります。
■ 代替休暇の単位

代替休暇はまとまった単位で与えることによって労働者の休息の機会を確保する観点から1日、半日、1日または半日のいずれかによって与えることとされています。
半日については、原則は労働者の1日の所定労働時間の半分のことですが、厳密に所定労働時間の2分の1とせずに、例えば午前の3時間半、午後の4時間半をそれぞれ半日とすることも可能です。その場合は、労使協定でその旨を定めておきましょう。
労使協定で、端数として出てきた時間数に、他の有給休暇を合わせて取得することを認めていた場合は、代替休暇と他の有給休暇を合わせて半日または1日の単位として与えることができます。
■ 代替休暇を与えることができる期間

代替休暇は、特に長い時間外労働を行った労働者の休息の機会の確保が目的のため、一定の近接した期間内に与えられる必要があります。法定時間外労働が1か月60時間を超えた月の末日の翌日から2か月間以内の期間で与えることを定めてください。期間が1か月を超える場合、1か月目の代替休暇と2か月目の代替休暇を合算して取得することも可能です。
■ 代替休暇の取得日の決定方法、割増賃金の支払日

賃金の支払額を早期に確定させ、トラブルを防止する観点から、労使で定めておく必要があります。
■取得日の決定方法(意向確認の手続)
例えば、月末から5日以内に使用者が労働者に代替休暇を取得するか否かを確認し、取得の意向がある場合は取得日を決定する、というように、取得日の決定方法について協定しておきましょう。
ただし、取得するかどうかは法律上、労働者に委ねられています。これを強制してはならないことはもちろん、代替休暇の取得日も労働者の意向を踏まえたものとしなければなりません。
■割増賃金支払日
代替休暇を取得した場合には、その分の支払が不要となることから、いつ支払っておけばよいのかが問題になります。労使協定ではどのように支払うかについても協定しておきましょう。
6.複雑な残業時間の把握に適切な勤怠管理システムとは
残業時間の正確な把握が今後ますます大切になっていく中小企業。
勤務時間を計算し適切な残業代を把握するのはもちろんですが、社員が自らの時間をしっかりと把握し、必要不可欠な残業以外はできる限り削減することができればそれに越したことはありません。
この章では新たに始まる中小企業の法定時間外労働の割増賃金に対応しやすくなる勤怠管理システムを紹介します。
■ 残業申請を行うことができるシステム
1日8時間・1週40時間を超えた場合の時間外労働を行う場合、残業申請は事前に行われる必要があります。
申請のない慢性的な残業が行われている場合、社員ごとの適切な残業時間の把握が困難になり割増賃金率を正確に計算できません。
残業申請方法が曖昧なもの、また紙やハンコによる申請で上長が不在の場合に申請できないものは適していない為、簡単・正確な残業申請が出来ること、また残業を行う理由を明記し記録。上長がその内容を判断し残業が可能かどうかその都度判断できるシステムが大切です。
■ 一ヶ月の残業時間を把握できるシステム
残業申請をした場合の残業時間の合計が正確に把握できるシステムが重要です。社員ごとに残業時間が表示されるシステムであれば多めに残業を行っている社員には早めの退社を促すなどの配慮も可能になります。
また月の残業時間が60時間に迫ってくれば自動で知らせてくれるシステムがあれば各々で残業時間を管理することも可能になります。
■ 休日労働・深夜労働・各残業時間を分けて管理ができること
休日労働・深夜労働・そして60時間以上、以下によって変わる労働賃金。
月末にすべての計算を行う事になればそれこそ無駄な労働時間を増やしてしまいます。
各労働時間を科目ごとに分けて計算できるシステムが大切です。
7.月60時間超の割増賃金にも対応できる「MOT勤怠管理システム」

こちらで紹介する「MOT勤怠管理システム」はスマホ・PCから打刻した時間の合計を自動計算。
残業申請すると上長にメールまたはチャット※でお知らせ。そのままシステム上で承認・却下の決裁を行うことができます。

一ヶ月の残業時間もシステム上で一目で確認でき、任意の残業時間(50時間など)を超えた場合スマホにアラート通知を行うこともできます。
一ヶ月の残業時間を60時間以上とそれ以外、深夜残業、休日出勤時間、に分けて出力できるため給与計算にかかる手間を大幅に削減できます。
MOT勤怠管理の資料ダウンロードはこちら
8.まとめ
残業を行わず法定労働時間内で全社員が業務を終えることがベストですが、人材確保が大企業ほど簡単ではない中小企業にとっては簡単ではありません。まずは正確に勤務時間、残業時間をを把握し適切に管理することから始めていきましょう。
参照記事:
厚生労働省「2023年4月1日から月60時間を超える時間外労働の割増賃金率が引き上げられます」
厚生労働省「改正労働基準法 Ⅱ 法定割増賃金率の引上げ関係」
2022年12月2日 9:22 AM | カテゴリー: 勤怠管理 関連キーワード: 60時間, 中小企業, 割増賃金, 残業
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